テレビプロデューサー、演出家、ラジオパーソナリティなど、
多方面でご活躍されている佐久間宣行さんに、
広告の可能性やクリエイティビティの活かし方、改善点についてインタビュー。
番組をつくる時に考えていること、一緒にTVを面白くする仲間だからこそ感じる広告の魅力とは?
面白い広告と面白い番組で埋め尽くされる60分が一番いい
広告について何か印象はありますか。
広告はめちゃくちゃ憧れでした。実は、大学2年までの2年間、広告サークルにいたんです。一番影響を受けたクリエイターの1人、2人はやっぱり、広告のクリエイターで、佐藤雅彦さんや、大貫卓也さん、あと谷山雅計さんの本はずっと持っていますね。
広告のどんなところに憧れたのですか。
広告は、自由な表現がありつつも、表現に機能があるのがすごく美しくて好きだったんですよ。課題を解決するのをクリエイティブでやっているっていうのがかっこよくて。かっこいいクイズを解いているみたいな感じがして。就職活動の時も麻生哲朗さんに「人の役に立つデザインを作りたいと思って広告に入ったんだ」みたいな話をしていただいたのを覚えています。
その後テレビ局に就職されたわけですが、テレビ番組制作者から見るテレビCMはどのような存在ですか。
やっぱり、自分の作っている番組にかっこいいスポンサーや面白いCMが流れると嬉しいですね。自分の番組の「提供」ゾーンに、面白いCMを作っているスポンサーが並んでる、うわ嬉しい!みたいな感じはあります。
(笑)テレビ業界の方にとっても、広告はやっぱり面白くあってほしいですか。
もちろん。だってやっぱり、面白い広告と面白い番組で埋め尽くされる60分とか30分ってのが一番いいよなと思うし。テレビ番組とCMは、戦友というか、仲間というか、そういう気持ちでいますね。

チームでの仕事は、企画の肝を言語化すること
過去にCMも企画されたことのある佐久間さんですが、番組制作と異なる点はありましたか。
やっぱり、クライアントの希望が前提にあるのが違うと思いますね。(佐久間さんがプロデュースをした)デリバリー&テイクアウトアプリ『menu』のTVCMに関しては、目的が「認知率向上」とはっきり言われていて。その認知を取るために、一番くだらない表現は何かなと考えて、誰もが見たことあるようなドラマのワンシーンを作って、その掛け合いを全部「デリバリーはmenu」というセリフにしちゃうっていうCMを作りました。
すごい。課題解決をしながらくだらないことを成立させるという…。
はい。で、一応認知率も目標値に到達できたみたいで。また、結構他のメディアにディレクターとして向き合う時は、広告だろうがなんだろうが、課題解決をしようという思考はあるかもしれないですね。僕は、出演している芸人やタレントが売れる番組を作るってよく言ってもらえるんですよ。そのぐらい、出演者を魅力的に見せたいっていうのが僕の中にはあって。それって広告じゃないですか?面白いのにまだ知られていない人を発掘して、その人の魅力を伝えたいと思うマインドがどこかにあるのは、広告を好きだったからじゃないかなと思います。
考える時、「ここが面白くなりそう」みたいなことは、一度言語化するんでしょうか。
そうですね。1人で作っている時はしなくてもいいんだけど、チームでやる時は企画の肝はここだよってことを伝えなきゃいけない。例えば、『あちこちオードリー』という番組は、自由に何でも話してもらうフリートーク番組なんです。そこで大事なのは、扇情的な予告をしないこと。本編でも、SNSなどで切り取られて誤解されるようなところは、短く編集しない。出演者は、あちこちオードリーという番組のことを信用してくれているから強い言葉を使って話しているのに、テンポだけを重視した編集では、強い言葉を積極的に使って話しているように見えてしまう。それは、番組にとって短期的な利益はあるかもしれないが、番組の出演者の信用を失ってくことになる。だから、そういう編集はやめてくれという話を明確にします。
そういう大切にしている企画の肝みたいなことが、それぞれの番組によって違うという感じですね。
面白いものを考えて、その届け方まで考える。
佐久間さんの番組では実験的な企画が多い印象です。
はい。企画の当たり外れがある番組のほうが長く続くイメージがあって。人気企画ばかりに全振りすると、時代が変わった時にすぐになくなるっていうイメージがあるので、放送するペースをあえて少し抑えています。もちろん毎回当たり回作ろうと思ってやっているのですが、当たり外れの大きい番組なんだよなっていうふうに言われていたほうが、居場所としては長く続くなっていう感じですね。時代がパッと変わった時に、番組も変えやすい状態にしておくというか。
確かに、佐久間さんの番組は長続きなイメージがあります。何か工夫されていることはありますか。
「あちこちオードリー」って番組が7年8年続いているのは、いくつか理由があると思っていて。1つ目は、オードリーにとって初めてに近いキー局の冠番組であるということ。だから、ファンはまず注目してくれる。2つ目は、フリートークで、いろんなタレントの本音を聞き出せるっていう企画が当時は新しかった。そして、3つ目は、コロナ禍に入るタイミングで、どこの局よりも早くオンラインライブをやってファンと密なコミュニケーションを取った。その上で収益を上げた、っていうことが大きいと思っています。番組の面白さ単体だけでここまで続くほど甘くないっていうか…
番組を広げていく方法まで、企画段階で織り込んでいるんですね。
はい。じゃないと、まぁ少なくともテレビ東京って局だと、制作資金が潤沢じゃなかったということもあって、面白いと思う尖った番組はなかなかすぐには続かないっていうのがあったので…。面白いものを作って、その面白いものの売り方、もしくは世の中への届け方も同時に考えないと、終わっちゃうなっていう感覚があるからかもしれません。
CMでもコンテンツでも、今の時代に長く愛されるものを作るのって、どうすればいいんですかね。
どうなんだろう。例えばなんかキャラクターとかアニメを作りたいなと思った時に、いまオリジナルアニメの市場にのぞんでいったら、もうよっぽどじゃない限り勝ち目ないじゃないですか。だとしたらそのIPが出せる場所ごと開発しなきゃダメなんじゃないかとかっていう感覚に今なっているんですよ。そういうチャンネルごと作るとか。クリエイティブとそれを広げるコミュニケーションとを同時に開発していくみたいなことしないと…。多分どれかの矢で戦おうとすると、もう多分その今の社会だと難しくなっちゃうから。

いい表現を作るための、キャラクターと信頼。
広告にもっとこうあってほしい、みたいな理想像ってありますか。
やっぱりギャンブルみたいな表現はしてほしいなと思います。博打的なというか、実験的な表現。一発勝負のアートみたいなCMというか…。冒頭でもお話しした、麻生さんへのOB訪問の時に教わった、広告が持つ機能性。それに加えて、「芸術性があるのが美しいと思ったからこの業界入ったんだよね」っておっしゃっていたのを覚えていて。やっぱ俺もそうあってほしいなって思いますね。
実験的な企画って、どうやって通せばいいと思いますか。特に若手の頃は通らないので…
僕も、若手の頃は企画が美しければ通るんじゃないかと思っていたんだけど、いやそんなわけねえなっていう。誰が作るかまで分かんないと。「キャラクターと信頼、両方の貯金がないと通んないんだな」って気付いたんです。例えば、キャラクターっていうのは、打ち合わせで、毎回「誰がやるんだよこんなの」みたいな本当ひっどい企画と、まじめな企画を出すんですよ。で、大体「なんだこれ、誰のだこの企画!」とかって怒られるけど、でもなんか「こいつ、こういう真面目なのも出してますよ」ってなって、まともだけどこういうこともやりたいのね…みたいなことをやり続けて、まずは名前とキャラクターを覚えてもらう。
信頼の貯金はどうすれば溜まるのでしょうか。
信頼は、誰にでもやれるような仕事で差をつけるみたいな。例えば、俺のカンペだけ異常に見やすいとか、そういうとこに、徹底的にこだわる。そうすると、キャラクターと信頼の貯金ができて、「まぁ、あいつしっかりしてる上に変な企画出してきて面白いから、ま、任してみるか」ってところまでなれるんですよ。
確かに、それは最強ですね。
あと、めちゃくちゃ尖った企画の場合は、めちゃくちゃ真面目な理論武装するっていうのも大事です。例えば僕だったら、YouTubeで回るか回んないか分かんない企画をやって、ちょっとこの要素も入れてみて、コメントの反応見てみようかなとかってやる。「あ、この部分は面白がってもらえんのか」みたいな。そうしたら、Netflixでやる時とかも、自分のYouTubeで試したことの中から、この要素とこの要素は多分受けますみたいなことをNetflixに言って大きく実現できる。スモールスタートで実験するんですよ。過激な表現は。

佐久間さんが考える、広告の力とは?
なんか、そうだな、こういうコピーがあった気もしますが「刹那と永遠」みたいなもんだと思っていて。その時の瞬間の行動を変えたりするものと、でも一生残ったりするものの両方があってほしいなと思います。
テレビも同じ課題をずっと持っていると思いますよ。特にバラエティは見逃し配信の再生数勝負になってくると、火力の強さが勝負になってくるから。SNS上でもコンテンツ数が圧倒的増加して、誰でも作れるようになったのはいいことだけど、その中でやってくためには、と思いますね。
編集後記
「あちこちオードリー」では、ゲストのテンションを上げるために、バラエティ番組の若手ゲスト向けにしてはかなりいいお弁当を楽屋に用意している、という話を聞き、そんなところまでこだわっているのか…と、その演出術に驚きました。普段、企画書上での作業が多い我々広告企画者こそ見習う姿勢だなと思いました。
取材・文
ADKマーケティング・ソリューションズ
EXクリエイティブ本部 第1EXクリエイティブ局 守田ルーム プランナー
黒川 大成







