JAAA 一般社団法人 日本広告業協会

おい、広告。

#02 KYARY PAMYU PAMYU

広告ってなんだ?“日本をパッと明るく、見た人を元気に”

原宿カルチャーを世界に発信し続け、現在は一児の母としても新たな表現に挑戦する
きゃりーぱみゅぱみゅさんへインタビュー。
彼女が考える広告の面白さ、若手との共創、
そしてリスクと隣り合わせの現代における「表現の覚悟」とは?

「進化」と「貫くこと」。そのバランスが生む強さ

ご自身も数多くの広告に出演されていますが、「広告の影響力」をどう感じていますか?

やっぱり影響力はすごくあるなと感じます。最近だと原宿の「ハラカド」のキャンペーン広告をやらせていただいたんですが、自分の顔写真がデカデカと掲出されているのを通るたびに見て、ドキドキしますね。
高校生の頃、雑誌の表紙をやらせてもらって原宿駅に貼り出された時の衝撃と嬉しさは今でも覚えています。まだ芸能人というわけでもなかった自分が、こんなに大きく貼り出されるんだって。

いち消費者として、印象に残っている広告はありますか?

ずっと気になっているのは学習塾の広告です。講師の方々が全員仮装をしている広告で、昔からインパクトを貫く姿勢がすごいなと思っていて。 私自身、「進化したい点」と「貫く気持ち」の両方を大切にしているんですが、そのバランスってすごく難しくて。 進化しすぎると、これまで応援してくれたファンの人を置いてけぼりにしてしまうことがあるし、かといって、進化することで新たなファンを獲得できることもある。
その点、その学習塾の広告は、強烈なインパクト(貫く部分)を残しつつ、今も「気になる存在」であり続けていて、あるとつい見に行っちゃったり、つい調べちゃったりする。ああいう面白い広告が好きです。

「変わらない芯」と「新しさ」の共存ですね。

はい。広告でも、「え、何これ?」って引っかかるものや、違和感のあるものが好きで。
最近、「奇抜なCM」をたくさん作られている監督の方がいて(笑)。面白いなと思って、自分のMVの監督をお願いしたこともあります。広告を見てクリエイターの方を知ることは多いですね。

「広告」はコンテンツ。つい見てしまう「ナシをアリにする」挑戦

最近は広告がスキップされがちですが、そういった環境についてはどう感じますか?

この間SNSで、ワンちゃんのショートアニメが流れてきたんです。感動的なストーリーに見入っていたら、最後に「このふりかけで長生きするだワン!」みたいなオチがあって(笑)。「あ、これ広告だったんだ!」って驚いたんですけど、ストーリーが面白かったから全然嫌じゃなかったんです。やっぱり視聴者の目に留まって、一つの「コンテンツ」として楽しんでもらうことが重要なんだなと感じました 。

今後どんな広告が増えていってほしい、もしくは増やしたいと思われますか?

私がもし今後広告のお仕事をさせていただくとしたら、やっぱり「私にしかできない表現方法」を大切にしたいです。
私の中で「ナシをアリにする」という挑戦をずっとしていて。普通ならヘンテコすぎて誰も着ないようなものを、きゃりーぱみゅぱみゅがやると「なんかオシャレじゃん」となる世界線を探っています。
街を歩いていても、「あー」とか「へえ」とか思って通り過ぎてしまうのではなく、やっぱり目に留まって「ん?何だろう?」と思わせたい。これからの挑戦としては、自分にしか成立させられない世界観を大切にして、奇抜な表現やカラフルでポップなもの、全身を使ったあらゆる表現方法で個性を出していきたいですね。

その唯一無二の世界観は、チームにはどのようにイメージを伝えているのでしょうか?

大切にしているのは、「やりたいこと」を100%伝えるのと同時に、「こうはなりたくない例」を具体的に出すことです。
SNSなどで資料を探すとき、「このイメージに近いけど、こっちは違うよね」というように、「なりたくないもの」をしっかり提示するようにしています。そうすると、後から「あ、これ違うんですよね」となることが減るんです。

年功序列は関係ない。「新しい風」を吹かせる若手の力

これから広告業界を目指す若者に向けて、チームでの関わり方や意識についてお聞きしたいです。

30歳になったくらいのタイミングで、「新しい風を吹かせたい」と強く思うようになりました。
これまでの伝統を守りつつも、新しい若い人たち、一緒に仕事がしたいと思ってくれる人たちと仕事をすることがすごく嬉しくて。
以前、ある広告のお仕事でご一緒した方が「きゃりーちゃんと仕事がしたくてこの業界に入ったんです」と涙ながらに言ってくれて。そういう熱量のある方とご一緒すると、今までにない新しい作品が生まれたりするんです。

経験年数よりも、熱量や感性が大事ということですね。

本当にそう思います。一人前になるのに5年10年かかる世界じゃ全然ない。むしろ、目を引くものを持っている人は「飛び級」できる世界です。
当時18歳くらいの大学生にMV監督をお願いしたこともあります。大手だからとかキャリアがあるからではなく、SNSを見て「この人面白いな」と思ったらオファーする。そういう世界が今は当たり前になっています。

18歳!それは勇気づけられます。

デビュー15年目だからこそできる挑戦でもあると思うんです。5年目くらいだったら「大御所の人にお願いしたほうが失敗しないかな」と守りに入っていたかもしれない。でも今は「失うものはない、崩れてもそれも私だ」と思えるので。
私自身、次世代の若い人たちを応援したいし、一緒に仕事をしていきたいと強く思っています。

「丸く収まる」よりも「新しい答え」を一緒に作りたい

お子さんが生まれて、広告の見方や考え方は変わりましたか?

ベビー用品の広告などはよく見るようになりましたし、興味もあります。ただ、もし自分がママとして広告に出るなら、「いわゆるママタレ」ではなく、きゃりーぱみゅぱみゅらしい表現でやりたいなと。例えば、ナチュラルな服でただ抱っこしているだけなら、私じゃなくてもいいと思うんです。

確かに、きゃりーさんならではの「新しい母像」が見てみたいです。

そういう新しい挑戦をする時って、どうしても「炎上」のリスクがつきまとう時代ですよね。でも、リスクを恐れて「無難」にしてしまったら、せっかくの面白さが消えてしまう。
私は、せっかくお金と時間をかけて作った広告が、炎上で取り下げられてしまうのが一番悲しいんです。だからこそ、クリエイティブを「守る」ためではなく、ギリギリまで「攻める」ために、どこまでなら大丈夫かというラインをセンシティブに考えています。

攻めるからこそ、リスクマネジメントも徹底されているんですね。

そうですね。例えば妊娠発表の時もすごく考えました。世の中には妊娠・出産に対して複雑な思いを抱えている方もいらっしゃるので、ありふれた表現は避けたくて。
チームのみんなと考え抜き、巨大な赤ちゃんの足に私が寄り添うビジュアルや、扉から赤ちゃんが出てくるような世界観を作りました。
エプロン姿一つとっても「女性が家事をするものだという押し付け」と捉えられる可能性もあるし、あらゆる炎上の可能性をシミュレーションした結果、あの写真は一つも炎上せず、奇跡的な写真になりました。

私たち広告会社も「やりたいこと」と「守らなければならないこと」の壁にぶつかることがよくあります。

今は「炎上したら怖いから無難にしよう」となりがちですが、もし私と一緒に挑戦してくれるクライアントさんがいたら、企画の段階から私も入って、「ここは炎上するかも」「この言い回しなら大丈夫」というのを直々に話し合って、一緒に作り上げていきたいんです。
ありきたりな表現ではなく、安全ラインを見極めた上で「一本取られたな!」と思わせるような、ワクワクする新しい広告を作りたいです。

きゃりーさんが考える、広告の力とは?

広告の力って偉大だと思います。最近はファンの方が「推し」の誕生日に駅の広告をジャックしたり、プロポーズに使ったり、「商品を売る」以外の使い方も増えていて面白いですよね。

広告があることによって知れる新しい世界がたくさんあるし、ふと目にした広告に励まされることもある。最近は暗いニュースも多いですが、そんな日本をパッと明るくするような、見た人が元気になれる広告を私も求めていますし、期待しています。私自身も、誰かの心を動かしたり、少しでも元気づけられたりするような作品に、これからも携わっていきたいですね。

編集後記

インタビューをしていて何より印象的だったのは、どんな話をしている時も終始楽しそうで、情熱に溢れていらっしゃったことです。これからの挑戦について語る時はもちろん、気になる広告の話をしている時も、「本当に面白いことがお好きなんだな」と。作り手としてつい難しく考えがちですが、きゃりーさんのようにまず自分たちが面白がり、立場や常識にとらわれず意欲を持って挑むこと。そのシンプルで熱量のある姿勢こそ、人の心を動かす秘訣なのだと改めて突き付けられました。

取材・文
博報堂 DY ホールディングス/博報堂 DY コーポレートイニシアティブ
人材開発室 職能開発グループ
熊崎 優奈

MOVIE

おい、広告。

叱咤激励インタビュー掲載中!

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