JAAA 一般社団法人 日本広告業協会

おい、広告。

#04 Neru Nagahama

広告ってなんだ?“自分の「好き」を知り直し、新たにキャッチできる力”

俳優・執筆活動など多方面で活躍する長濱ねるさんに、
広告の可能性やクリエイティビティの活かし方、改善点についてインタビュー。
広告に出演する立場として、また若者世代のいち生活者としての、
広告に対するリアルな考え方とは?

自分の知らない世界を知れる広告

普段どのような場面で広告に接していますか。

テレビやSNS、動画配信、街中や電車の中など、日常のあらゆる場面で目にします。好きなアニメのコラボ商品を広告で知って友人と一緒に買いに行くこともありますし、本が好きなので、電車の中で新刊の広告を見て、その本を買うこともあります。

これまで印象に残っている広告はありますか。

「これは何のCMなんだろう」と引き込まれる広告が好きです。特に印象に残っているのは、電力会社のドラマ仕立てのCMで、同棲中のカップルが喧嘩の最中に停電になり、離れて暮らす家族を思い出すという作品です。つい見入ってしまい、最後に企業名が出てきてはっとしました。私も九州に住む家族のことを思い出し、連絡を取りたくなりました。他には、インフラ企業のCMで、女性のタクシー運転手が、ラジオで聴いた韓国アイドルの音楽に夢中になり、韓国語を勉強してライブに行くのを楽しみにするという作品も興味深いです。「推し」はふとしたきっかけで出会い、生活を変えるほどのパワーになるのだとこの広告で改めて感じました。自分の知らない誰かの想いや世界を知れることは、広告の持つ大きな力だと感じました。

広告を機にご家族にご連絡してみようなどと、心が動くことがあるのですね。

例えば、年末年始になると受験生を応援する広告を多く見かけます。普段はあまり学生との接点がないのですが、「受験の季節か」と気づくと、街中で勉強している学生の方を見る目が変わり、応援したいし、何かあったら助けたいという気持ちになります。私には姉兄がいたので、受験生を支える家族側の視点で描かれた広告にとても共感します。広告のおかげで、自分の生活環境の外にいる人にも思いを向けられるのだと感じます。

消費者のリアルな声が購買につながるSNS

最近の広告について、感じることや嫌だなと思うことはありますか。

SNSでは、アルゴリズムで自分の好みに合った広告が流れることが多く、漫画や洋服など自分の好きなものを目にするとつい買ってしまうことが多いです。広告のいい所は、新しい出会いがあること。「好きだったけど意外と知らなかった」や「こんな新しい本が出ているんだ」など、気付くことができます。ただ、映画を集中して観ている時に広告が入るとスキップしてしまうこともあります。媒体やタイミングによって広告を飛ばす方もいると思いますが、その方々も街中では広告を目にしているだろうし、新しい化粧品などを買う時は広告を参考にしている方もいるはずです。駅の広告の前で多くの人が写真を撮っている様子も実際によく見ますし、広告が強く敬遠されている印象はあまりありません。

媒体によってそれぞれ広告の特性は異なると思いますか。

自分に関連したものが流れてくるSNS広告と、色んな世代に届くCMや街中の広告は、それぞれに価値があると思います。自分の好みや考えはどうしても固まってきてしまうので、ふとテレビや街中で広告を見ると、新たな発見に繋がります。好きな情報を自分で選べる時代だからこそ、家族とリビングで見るCMのようなすべての世代に垣根なく届く広告の存在は大きいと思います。

長濱さんを含む若い世代の方は広告についてどう思っていると感じますか。

媒体が増えて広告に触れる場は変わっても、広告を機に物を買う頻度はそれほど変わらないと感じます。SNSの発達によって、いち消費者の「効果があった」という投稿が拡散されて商品が売れるなど、世間のリアルな声が購買に直接繋がっている気がします。10代や20代前半の方はよりSNSに触れる時間も長いと思うので、リアルな声を参考にしている印象があります。

特定の価値観を押し付けないで

広告の改善点についてはどう考えますか。

特定の価値観を押し付けられるものは避けたほうがいいと思います。例えば、電車内で、美の基準や特定の価値観について「こうあるべき」と言い切ったメッセージを見ると、情報の取捨選択が難しい若い世代の目に触れることを想像して心配になります。20代の今では、様々な情報を目にしても、真偽を見極めやすくなりましたが、電車通学していた学生時代を振り返ると、ふと目にした広告が意外と脳内に残っていたと思います。「そこを直しましょう」などとうたわれている広告を見ると、自分では気にしていなかった点を、恥ずかしいことなのかと思い始めてしまう人もいるのかなと感じます。

企業は商品やサービスを利用してほしいがためにそういう表現にしていると思いますが、配慮が必要ですね。

自分に合ったものを選べるという商品などの広告がこれから広がるといいなと感じます。人それぞれに違いがあることを前提とした広告が増えることで、自分自身への肯定にもきっと繋がると思います。

商品が生まれた背景や込められた思いを知りたい

広告で求められるイメージと、自分のこうありたいというバランスの難しさを感じることはありますか。

企業カラーに寄り添う方もいれば、自分のカラーを持ったまま企業と掛け合わせる方もいらっしゃると思います。「好き」を発信しやすい時代になり、「推し」の存在が日々の活力という方も多い中で、「その人が好きだから応援する」という消費者も増えていると感じます。今後は、企業そのものを応援したいという風潮により変化していくような気がしています。商品だけではなく、商品を売っている方々や、商品を通して発信しているメッセージに共感できるかが大事になり、そこに消費者も注目していくのではないでしょうか。

「応援したい」という風潮になっていくと思われる理由は何でしょうか。

例えば、「安い」を前面に打ち出した商品があった時に、安さの理由に想像を巡らせられる自分でいたいと思っています。安さを担保するために誰かが苦しい思いをしていないか、適切な対価は支払われているか。その商品の価格や品質だけで評価せず、生まれた背景を知ろうとする姿勢を持ち続けたいです。企業側も商品の表面だけを届けるのではなく、込めた思いや生まれた過程を伝える方が、消費者が手を伸ばす一つの判断基準になるのではないかなと思います。商品だけではなくて企業自体を応援したいと思われる企業が増えてほしいという希望もありますね。

消費者のリアルな声の力と、企業が伝えるメッセージの力についてどう感じますか。

消費者の声は、商品の良い所も悪い所も率直に伝えてくれるため信頼性が高く、購入へと繋がりやすいと思います。一方でCMは、使用感や味などの詳細よりも、この商品から何が想像できるか、どんな思いが込められているかを伝えてくれます。リアルな声と、企業がCMで打ち出すメッセージはそれぞれ違う役割を果たしているため、どちらも私たちに必要だと思います。

長濱さんが考える、広告の力とは?

新たな出会いをもたらすと同時に、今まで自分が大事にしてきたものや大切にしたいもの、自分の「好き」に改めて気づかせてくれる力があるものだと思います。自分の世界がより愛おしくなる瞬間もあれば、新しい世界が広がることもある、そんな2つの面があると感じています。

編集後記

読書家の長濱ねるさん、時折、上を見上げながら言葉を丁寧に選びつつ、まっすぐ自身の考えを語る芯の強さが印象に残りました。あらゆる立場の方々のことを自然と想像できる共感力の高さは、多様な役を演じる俳優さんだからこそでしょう。普段から一つひとつの役柄に真摯に向き合われているのだろうと、容易に想像できました。また、苦しい思いをしている方々のことに思いを馳せられるのは、ご自身が被爆3世ということも影響しているかもしれません。そんなパーソナリティーを持つ長濱さんの今後の活躍にエールを送りたくなるインタビューとなりました。人の心を動かし、行動を引き起こすきっかけとなる――。そんな広告の持つ力を改めて感じられた機会となり、広告業界に身を置く者として背筋が伸びるひとときでした。

取材・文
電通コーポレートワン
ブランディングオフィス 広報室広報部
内田 桃子

MOVIE

おい、広告。

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