特別インタビュー「経営層から見た、JAAA懸賞論文」

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JAAA懸賞論文は、経営層から見るとどのような賞で、どんな点が評価されているのだろうか。
東急エージェンシーの代表取締役会長で、JAAA人材育成委員会担当理事の桑原常泰氏に話を聞いた。

(左)桑原常泰氏/東急エージェンシー、JAAA人材育成委員会担当理事
(右)浜田 茂氏/読売広告社、JAAA懸賞論文委員会委員 *聞き手

――本日はお忙しい中ありがとうございます。まずは、人材育成委員会の担当理事としてのお立場から、JAAA懸賞論文についての印象をお聞かせいただけますか。

桑原 この懸賞論文は、JAAA会員社のベテランから若手まで、幅広い方に応募いただいていますが、特筆すべき役割というと、若い方達が業界の問題や課題を見つけ、それに対し“次世代を担っていく自分はどうするか”を主張する場だということです。いま世の中が大きく変わり、業界の際がなくなってきて受け手側の感覚の人達が増えてきていますが、若手の方々も、これまでは広告の受け手側で消費者に近い存在でした。広告業界に長らく従事している私達にとって、そうした人達がどう考え、どうしていきたいと思っているのか、そうした視点に期待感を持ちますし、作品を楽しみにする理由の一つになっています。

そういう意味では、今後ますます業際がなくなっていくと予想される上で、応募を日本語に限定せず海外国籍の方がネイティブ言語で参加できる仕組みや、広告会社外の人達からも作品を受け付けられるなど、多様な視点・価値観に触れられるようになれば、もっと面白いですね。

一方で、受賞作品が業界に広く共有されていると言えないのでは、という課題を感じます。せっかく、何百編という応募の中から選ばれた作品なので、もっと多くの人に読んでもらえると良いと思います。そのためには、共有するための仕掛けづくり、サポートが必要なのではないでしょうか。もう一つ、いま「選ばれた」という言葉を使いましたが、JAAAで使用している「懸賞論文」「入賞」「入選」という言葉がちょっと固い気がします。こうした言葉が、もし応募の枠を狭めているのだとしたら勿体ないと思います。選ぶとか募集するという視点よりも、むしろこの論文事業から何を広げて、どう活用していくか、どう共有していくかという点が大事な気がします。

――共有の促進については、今後の論文事業の一つの課題かも知れません。
今度は経営者としてのお立場として、この懸賞論文をご覧になるといかがでしょうか。
この事業はある種ボトムアップだと思いますが、こうした取り組みは、広告業界の可能性を広げていく上でも、経営者として刺激になりますでしょうか。

桑原 二つ大きな意義があると思っています。経営者の立場から、会社が世の中に向けて変わっていってもらいたい、社員が強くなって欲しいと常々思っています。“強く”というのは色々な意味がありますが、論文受賞に至らなくても、業界の課題を見据え、その課題を乗り越えて自分はこう進んでいきたいと自ら考え、まとめ、それを皆に知らしめる。このプロセスを経ることで社員一人一人が強くなっていく。広告会社というのは基本は人なので、このプロセスはとても大事だと思いますし、そのきっかけがこの懸賞論文だと考えています。

もう一つは、各社カラーがあるように、自分の会社の中にいると風土やイメージがある程度固まってきます。それが論文を読むことで、世の中にはこんな課題があるのかという発見や新しい発想に出会えます。普段接している仕事の枠、カラーの枠から、触覚を刺激されて枠外の様々な変化を感じ取り、知ることができる一つが、この懸賞論文だと思います。

――最後に、JAAA懸賞論文に期待することをお聞かせください。

桑原 繰り返しになりますが、受賞作品や、数年前からJAAAサイトに掲載を開始したファイナリスト作品が、広く業界に広がっていってくれると良いと思います。共有が出来れば、業界としての底上げになり、業界の強みにつながります。

 

 

――本日は、貴重なお時間をありがとうございました。