特別座談会「広告バカが語る、JAAA懸賞論文」

  • Home
  • 特別座談会「広告バカが語る、JAAA懸賞論文」

書き手にとって論文応募のメリット

宇賀神 書き手にとっての意義について触れたいと思います。中西さん、伊藤さんは受賞経験者としてのお立場から、受賞して良かった点や受賞後の変化など、ありますか。

伊藤 皆さん一緒だと思いますが、自分の仕事とか仕事を通じて考えてきたことの非常に良い棚卸になります。
モヤモヤしていたものが、論文という形に落とし込むことによって初めて語れるものになる。思いだけだったらパワポでも出来るかも知れませんが、
思いだけでは論文は書けません。個人的な思いをどうやったら社会的な課題に転換できるか、この作業は非常に大変ですがやっておくととても良いです。色々な表現方法がありますが、論文という形式を堅持している良さはあると思います。
また受賞したことで、自分の作品内で引用させていただいた先生の研究会で発表したり、広告業界以外の方から読みたいという声をいただいたり、仕
事だけしていては広がらない縁に出会えたことが良かったです。

 

中西 書いて良かったと思うのは、一つのパッケージとしてまとめたことです。
感覚としては大学の卒論に近いというか、今自分が考えていることや、何となく答えを出したいなとモヤモヤ思っていることに対して、自分で問題を見つけて調べて書いて答えをひねり出した、その一連の作業を自分で行い論文の形に仕上げた、という経験は良かったですしこの作業は大事だと思います。

 

伊藤 私も何回か書いてきて思うのは、問いがあまり良くないと、書いても書いても良いものにならないということです。結論としては絶対的に良いことを書いていても、出発点の問いがふわふわしていると良いものにならない。良い問いを見つけている人、そういう人が集まっているのがこの論文なのかも知れません。書き手の立場から見た時に、自分の中に問いが澱のように溜まってくる時期がありますが、そういう人達が多い業界って良いなと思います。言われたことだけをやるんじゃなくて、自ら問いを立てて自分が解かなくちゃいけないんだと勝手に使命感を感じるような、そんな人達が増えてくると、良い業界、アクティブな業界になるんじゃないかなと思います。

応募者へのメッセージ、期待すること

宇賀神 最後に、これから書く方に向けてのメッセージや、応募作品に期待することをお聞きしたいと思います。

中西 JAAA論文作品からワクワクするような名作というか、名キャッチフレーズのようなものが出てくると良いなと思います。10年程前にレイ・イナモト氏が「広告の未来は広告ではない」と発言されていましたが、変化の本質を見通して真に迫っているフレーズだと思います。今までの論文作品も未来を見通すヒントがたくさん含まれていますが、今後10年という益々見通しにくくなってくる業界を、どう射貫くか。その視点を非常に期待します。

 

白𡈽 新人の方にも書いて欲しいですが、30 ~40代の方にも書いて欲しいですね。最も多忙な年代だと思うので大変だとは思いますが、今回の論文
テーマ「広告、次の10年」の10年て、自分の今後の10年と考えるとこの年代ってとても切実だと思うんです。その人達が真剣に考えたらものすごく面白い作品が出てくると思います。

 

浜田 先程お話にもありましたが、良い問いを見つけて欲しいですね。この懸賞論文は、正解というより新しいものを創っていくためのきっかけになる場だと思います。その始まりとなる問いがあると、それをきっかけに気付きが増えて、妄想が構想になって計画になって現実になる、そのステップがここから始まるんだと、思ってもらえると良いなと思います。

 

伊藤 新型コロナウイルスが世界中の生活やビジネスに影響を与えて全てが変わったので、一時的な答えはこれです、と示すのが難しい回だと思います。逆に言えば伸び伸び書ける、何でも書ける(笑)。このチャンスを活かして、自分なりのニューノーマルを示して欲しい。想像するニューノーマルに対してどんなリサーチクエスチョンで臨むか、“何を問い直したか”という点に注目したいと思います。

 

大城 ここ数年思っていたのが、潮流に乗っかってくる作品が見られるということです。トレンドや常識に乗って良いこと書いて当てにいくよりも、自分の中にあるものからちゃんと取り出して、違うかなと思ってもぶつけてみるというのが一番響くなと。ニューノーマルという言葉がありましたが、この前提本当かなという疑いや、自分は何が好きで何を大切にしたいと思うだろう、というところからスタートするのもありなのかも知れませんね。

 

宇賀神 色々な前提が疑わしくなってきている中で、他の人が言われていることとか流れに乗っかっても仕様がない。「広告バカの祭典」という募集コピーに込めた想いが正に、他の人にとらわれることなく、自分の中に溜まったモヤモヤから問いを立てて、発信してもらえると良いのかなと思います。

 

浜田 「広告バカ」って広告に対する強い情熱を持って突破しようという心意気をもった人達で、その人達にその心意気を存分に発揮してもらいたい。広告が好きとか広告の可能性を信じている思いを爆発させて欲しいです。

 

中西 これだったら良い点取れるだろうというのではなくて、粗削りでも良いからこの論文という場を使って、私達に、業界に、ぶつけてもらいたいですね。そんな作品に出会えることを楽しみにしています。

関連記事

JAAA懸賞論文は、経営層から見るとどのような賞で、どんな点が評価されているのだろうか。
東急エージェンシーの代表取締役会長で、JAAA人材育成委員会担当理事の桑原常泰氏に話を聞いた。
→本文はこちら