特別座談会「広告バカが語る、JAAA懸賞論文」

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今年50回を迎えるJAAA懸賞論文。半世紀続く本事業の知られざる魅力、そしてこれからの可能性とは?
今年の募集コピー「広告バカの祭典」にあやかって、広告を愛してやまない「広告バカ」の現役審査員が語りました。

(1)座談会風景

(2)第50回懸賞論文募集ポスター

審査員

ADKマーケティング・ソリューションズ 統合チャネル戦略センターデータソリューション ユニットシニア・アナリスト 宇賀神貴宏氏(司会)

朝日広告社 デジタルメディアセンターセンター長 大城 勝浩氏

オリコム 企画制作本部データソリューション開発室シニアディレクター 白𡈽 栄次氏

博報堂 第二プラニング局ストラテジックプラニング三部ストラテジックプラニングディレクター 伊藤 耕太氏

フロンテッジ メディアマネジメントディビジョン広報チームマネージャー 中西 知行氏

読売広告社 コミュニケーションデザイン統括エグゼクティブディレクター 浜田  茂氏

過去10年間の受賞作品が示すもの

宇賀神 JAAA懸賞論文は、今年で50周年を迎えます。この10年間は広告業界の曲がり角とも言われて、色々なことがダイナミックに変わっていった時代でした。その時代変化に対応するように、応募作品も色々なテーマが書かれてきました。過去10回の受賞作品で語られたことを通じて、この10年間がどのような時代だったのか、振り返ってみたいと思います。

白𡈽 インターネット広告費がこの10年間で拡大したように、デジタル、インターネットがベースにあります。10年間の前半は、SNSで話題をつくるとかそれがどんな影響を及ぼすかという話でしたが、5年くらい前からAIやブロックチェーンなど、デジタルテクノロジーが出てきてそれらが広告にどう影響を与えるか、という流れでした。
並行して、ソーシャル、CSR、パーパスなど、単なるマーケティングだけではなく社会に対する広告の機能や、求められる役割が語られてきました。

 

大城 広告会社の活動領域が、コミュニケーションから生活全般に広がってきて、逆にどうしようと逡巡したのがここ4、5年の作品だったと思います。我々はコミュニケーションだけやっていて良いのだろうかという振り返りが印象的でした。

 

浜田 10年くらい前の作品から100年に一度の大変革期と言われ、マス広告の危機が叫ばれている中でどういう活路を見出していくのか、色々な広がりを模索する一方で、“広告ってどういうものだっけ?”と、本質を問うような議論が出てきた気がします。短期的な最適解を探るだけが広告じゃない、もっと他の広告の姿があるのではないかという視点の提案が特にここ数年でした。

 

中西 広告業界が広がり過ぎているからこそ見えづらくなっている“広告の本質”を見極めるという流れがありましたね。受賞作品を見ると、AIやブロックチェーンといったテーマが出てきた後に、広告の本質を問い直すという作品がありました。
広告業界は広がらなきゃいけないし変わらなきゃいけないんだけど、我々の軸って何だっけと明確にしようとする動き、広がりと揺り戻しがあった気がします。

 

伊藤 桑原理事のコメントにもありますが、若者の視点が表れやすい場だと思っています。クリエイティブ作品のアワードは、実績や予算といった要素が多かれ少なかれ影響しますが、JAAA論文新人部門の良い点は、実績のない新人でもいきなり書けてしまう点です。生活者としての広告に対する見方が、ある意味クリエイティブ作品のアワードより鋭敏に出やすい、なので未来予測的な性格を持っていると思いますし、それを受け止められる場所であって欲しいと思います。
この10年間の受賞作品タイトルのワードクラウドを見ると、名詞が多い時代から動詞が目立つ時代になってきているなと思います。名詞で語れるものは意味が確定しているものという気がします。直近第49回のタイトルは、解き明かす/乗り越える/向き合う/生み出す/支える/探る…など動詞が多く、垣根を越えていく、ボーダーを押し広げていくという書き手の意思が反映されていると感じます。あまりまだ意味が確定していないものを探りたいという様が伺えます。
広告に関する論文募集事業は他団体等でも実施しており、それぞれに役割がありますが、今までの傾向から外れる論文でもJAAAだったら受け止めても
らえるかもしれない、という期待感があります。広告業界自体が動態的になっていることに対して、それを受け止められる柔軟性、懐の深さがちゃんと用意されているというのは、業界にとって良いことだと思います。

 

大城 今回の募集コピー「広告バカの祭典」にも特徴がありますね。この論文は、もっと野に下りて街に出ているところの視座だから、何でも飲み込めちゃうという許容があると思います。

 

浜田 今回の座談会の企画意図でもありますが、JAAA論文の本当の姿を分かって欲しいという思いがあって、今の話が正にそこを語っていると思いました。実際に経験をお持ちの方も、今の仕事の地続きの中で思ったことを意見として表明していける場です。新人の方は、社会人になって今までの自分との差が出てきてしまうと思いますが、広告業界はうまく設定すれば社会人の自分と今までの自分を繋げていくことが出来るすごくユニークな業界で、新人の方は論文に今までの自分の視点を活かせる。それが面白いし価値がありますね。

◎直近10年間の受賞作品タイトルのワードクラウド

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