FRESH EYE

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株式会社 フロンテッジ
ソリューションクリエイティブディビジョン
コピーライター

青木 美穂

「広告に問いはあるか。」

 

「わかりやすくて、いいですね」と言われるとうれしい。

 

たぶん相手は褒めようとしている。私も明快でいいなと思った時はそう言うと思う。アウトプットにわかりやすさを求められることは多いし、それはきっと誤解されずに考えを伝えられるからだ。わかりやすいと思ってもらえるのは、すごくポジティブなこと。でも本当にいいことばかりなのだろうか。なんとなく思っていたことが具現化された時の、特有の気持ちよさ。ここにわかりやすさの罠が潜んでいると思う。

 

映画を観た後の心情を思い出していただきたい。たとえば、イメージを共有できそうな最近の作品で「ドライブ・マイ・カー」にしよう。私は家福と高槻が車の後部座席で話すシーンが好きだった。「いい映画を観たな」という気持ちと一緒にそのシーンを思い返すが、何がいいのか、もやもやと残るものがある。セリフに自分を重ねたのか、演者の表情に引き込まれたのか、うまく言葉にできない。作品から何かを受け取ったことだけは確かだ。ここで、同じシーンがいいと言う人の、「わかる」と思うコメントを見かけてしまったらどうだろう。そのまま考えるのをやめてしまうのではないだろうか。共感しておしまいである。「わかる」と思った後に自分の考えを深めるのは難しい。ひとつの答えを手に入れた気持ちよさがあるからだ。それがわかりやすさの罠だと思う。一方で先に述べた、作品から受け取ったもの。それは直接的なメッセージではなく、「なんで心に残ったんだろう」と思考を深める問いであり、そんな考えさせるコミュニケーションがあると思う。

 

反射的に行動を起こしてもらえることも大事だが、感じたことを咀嚼したり、反芻したりするような、時間をかけるコミュニケーションの重要性にも、もっと目を向けてもいいのではないだろうか。問いは思考に働きかけ、やがて議論の起点になる。わかりやすい広告ばかりを目指してしまったら、わかった気持ちにさせた途端、残らないものになってしまう。私たちは自ら進んで、消費される環境を作っていくことになる。「偉大な思想などにはならなくともいいから、偉大な質問になりたい」と言ったのは寺山修司だが、どんな問いかけをするか、私たちには問う力が試されていると思う。

 

すべてを言わないから存在する、余白がある。その余白に誰かが自分の考えを書き足しては消して、また書き足したくなるような、考えさせるものを作りたい。やり方や手法なんてないのかもしれない。けれどこの先も仕事をしながら、「問い」の作り方を考え続けていきたい。

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